蝉(セミ)の悲しい一生
僕は今、木の中にいるんだよ。
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木の中から下り、地中へ向かって降りるんだ。
すごく疲れる。
降りるまでにもすごく時間がかかる。
降りるとそこは地獄。
食べるものは木から降りてくる雫のようなものだけなんだ。
地上は危ないから、今は土の中でじっと待つんだ。
僕の友達の何匹かは土を掘り起こされたり、動物に襲われて亡くなったよ。
僕はすごく運がいい。
なんでかって?
僕は5年も地中にいるのに一度も襲われてないんだから。
友達は15年も地中にいるんだ。あと2年で外に出られるらしい。
僕はあと1年じっとじっと待つんだ。
大人になることを夢見て、、、
真夏の暑い日になるまで、、、
やっと一年が経った。
そんな僕は今日から新たな生活が始まる。
やっと外に出られる。
外に出たら空を飛びたい。
僕には時間がないから。
猛練習して空を飛べるようになれた。
だけど、この前友達は黒い鳥に襲われて亡くなったよ。
一人ぼっちで空を飛ぶんだ。
食べ物も無いつらい日々。
友達もいない日々。
そんな日々でも僕は恋をしたくなった。
声を出して、結婚相手を探すんだ。
中々見つからないのは普通って聞いたよ。
だけど運が良かった。
たまたまいい人が見つかった。
僕のことを思ってくれたんだ。
子供の顔は見れないけれど、頑張って育って欲しい。
だいぶ手足の感覚が悪くなってきた。
もう年なのかな。
木から落ちそうだ。
転んでひっくりがえって、背中は地面。
起き上がれない。
誰も助けてくれない。
これで僕の一生も、、、
長いようで、短かった一ヶ月もこれで終わり。
十分楽しめたかな。
ここで眠ることにしよう。
僕は逃げも隠れもしない。
だってここからまた新たな旅が始まるのだから。
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